気づけばカビが…秋の家で起こっていること
朝夕が冷えてきて、ふと畳の上に寝転ぶと、
ほのかに湿ったような匂いが鼻をかすめる。
「またカビかな…?」と、思わず押入れを開けて確認する。
そう、秋はカビの季節。
真夏のように蒸し暑くもないのに、なぜかこの時期になると古民家ではカビや湿気のトラブルが増えるのです。
日中25℃前後、夜は15℃前後。
この寒暖差こそが“見えない結露”を生み出し、土壁や梁、畳の下にじわりと水分をため込んでしまう原因。
「エアコンを使うほどでもない」から油断しがちですが、実は室内の湿度が70%を超えていることも珍しくありません。丹波篠山でもこの季節、「押入れの匂いが気になる」「北側の壁が黒ずんできた」そんな相談が増えてくるのです。
今回は「古民家の湿気と上手につき合う暮らし方」のお話をしたいと思います。
カビが出る家と出ない家、その違いは?
「うちは古民家だから仕方ない」そう思っていませんか?
でも、同じ築年数でも“カビが出る家”と“出ない家”があります。
その違いを一言でいえば、湿気が逃げられる家かどうか。
古民家は本来、土壁や木材が呼吸しながら、湿気を吸ったり吐いたりして、うまく調整していました。でも現代の暮らしは、気密性の高いサッシや断熱材、家電の配置によって風の通り道が減ってしまっています。高気密、高断熱の家はとても質の高いものでありますが、時に「ペットボトルの家」と揶揄されることもあります。
つまり、「自然の呼吸ができなくなった家」ほど、カビが出やすいということです。
「出る家」の特徴:湿気がこもる構造と暮らし方
1. 通気が悪い間取り
古民家の押入れや納戸は、もともと風が抜けるように造られていました。
ところがリフォームで気密性を上げた結果、空気がほとんど動かなくなっているケースが多いんです。
特に北側の部屋、押入れ、仏間の裏など、「日が当たらず、空気が動かない場所」は要注意。
壁や床の表面温度が下がり、そこに湿気が結露してしまうのです。
2. 家具を壁にぴったりつけている
タンスや本棚を壁に密着させていませんか?
古民家の壁は外気に触れやすく、冷えやすい。
そこに家具をくっつけると、裏に結露が発生しやすくなります。
「少しの隙間」がカビ予防には大切。こぶし一つ分(約10cm)あけるだけで、
湿気の抜け道ができるのです。
3. 朝の換気をしていない
秋は外が冷えるからと窓を閉めたままの方も多いでしょう。
でも、夜のうちに発生した水蒸気は人の呼吸や布団からもしっかり溜まっています。
朝の5分換気だけでも湿度をリセットできます。
外が冷たくても、短時間で十分。
“湿気の出口をつくる”ことが、何より大事なんです。
4. 床下・屋根裏の通気が塞がっている
築50年以上の家では、床下換気口が土や植物でふさがっていたり、
屋根裏の通気口が塞がっていたりすることがあります。
「地面の湿気が上がる」「天井裏が乾かない」
この2つが合わさると、家全体が“しっとり”した空気に包まれるようになります。
定期的に床下を点検し、必要なら小型換気ファンを設置するだけでも大きく改善します。
「出ない家」の共通点:湿気を逃がす工夫がある
1. 風の通り道をデザインしている
古民家の知恵のひとつに「風の道」があります。
玄関から裏庭へ、座敷から縁側へ。
昔の家は、季節の風を取り込むことを前提に設計されていました。
出ない家は、この“通り道”を意識して残している。
たとえば、廊下の戸を格子戸にしたり、欄間を再利用して風を抜けやすくしたり。
ほんの少しの開口部が、湿気をためない大きなポイントです。
2. 調湿素材を上手に使っている
内装に珪藻土や漆喰を使う家は、湿度の上がり下がりをゆるやかにしてくれます。
また、調湿ボードや木質系の仕上げ材も効果的。
「見た目を新しく」だけでなく、素材そのものが呼吸できるように整えるのがコツです。
3. 「換気」を生活習慣にしている
機械に頼らずとも、日常の中で湿気を外へ逃がす“意識”を持っている家は強い。
- 朝5分の換気
- 雨の日でもサーキュレーターで空気を動かす
- 押入れを時々開ける
そんな小さな積み重ねが、カビを防いでいます。
秋にカビが出やすい理由、もう少し深掘り
昼夜の寒暖差=“見えない結露”
外気温と室内温度の差が大きくなる秋。
外壁や窓の表面温度が下がると、室内の湿気が「水滴」として凝結します。
この結露が壁の裏や床下で起こると、目に見えない場所でカビが繁殖。
知らないうちに柱や土台を傷めてしまうこともあります。
秋の長雨・朝露・霧の影響
丹波篠山は秋の朝に霧が立ち込めることも多く、外気中の水分が高くなりがち。
この湿った空気が建物にじわじわと侵入し、冷えた壁面に触れると、さらに湿度を上げます。
つまり、「外からの湿気」も“カビの一員”なんです。
実際のリフォーム事例から学ぶ「出ない家」づくり
私たちクレアが手がけた築70年の古民家では、北側の壁一面にカビが出ていました。
内壁をめくってみると、断熱材が湿って黒ずんでいたのです。
原因は、屋根の谷部からの雨の吸い込み+通気不足。
対策として、
- 屋根の板金補修
- 内側に調湿ボード+漆喰仕上げ
- 床下換気ファンの設置
を行いました。
翌年、梅雨も秋もカビは再発せず。
「家の空気が変わった気がする」と施主さんも驚かれていました。
古民家リフォームでできる“秋カビ”対策
1. 通気と断熱のバランスを整える
古民家リフォームでよくある誤解が、「断熱を強くすれば結露は防げる」という考え方。
実際は、断熱材を入れすぎると風の通りが悪くなり、湿気がこもって逆効果になることも。
断熱と通気の“ちょうどいいバランス”を見つけることが大切です。
たとえば、
- 床下に防湿シート+換気口
- 外壁に透湿防水シート
- 内装に調湿性のある仕上げ
これらを組み合わせると、古民家でも湿気を上手にコントロールできます。
2. サッシの結露対策
秋から冬にかけては、冷えた窓ガラスが結露の温床になります。
内窓をつけて二重サッシにするだけで、外気との温度差をやわらげてくれます。
また、サッシ周りのパッキンやコーキングの劣化も水分の侵入を防ぐうえで要チェックポイントです。
3. 屋根・軒の見直し
瓦屋根の隙間や短い軒は、秋の雨や朝露が壁に伝う原因になります。
屋根の点検とあわせて、軒の出を延ばす小工事も湿気対策には効果的です。
暮らしの中でできる“今日からの対策”
- 朝5分の換気を習慣にする
- 家具を壁からこぶし一つ分離す
- 押入れや納戸に除湿剤を置く
- サーキュレーターで空気を動かす
- 雨上がりに窓を開けて空気を入れ替える
こうした“日々の小さな工夫”が最強のカビ対策です。
高価な設備よりも、暮らしのリズムの中に「風と湿気の流れ」を意識するだけで、家は長持ちします。
秋は“家の呼吸”を取り戻す季節
秋は、家の中と外の温度差が大きくなる季節。
カビや湿気が出るか出ないか、その差は「風が通るかどうか」にあります。
古民家の良さは、もともと自然と調和する構造にあること。
そこに現代の知恵をほんの少し添えてあげるだけで、「カビが出る家」から「出ない家」へと変わります。
そして何より、家と同じように私たちの暮らしも“呼吸”が大切。
忙しい毎日の中でも、窓を開けて深呼吸する時間を忘れずに。
湿気も、カビも、風と光の力で、きっといい方向へ変わっていきます。
季節とともに暮らす、ということ
「秋になるとカビが出る家、出ない家。」
この違いは、家の“年齢”ではなく、“暮らし方”の違いかもしれません。
風を感じる。
光を入れる。
家を見て、手をかける。
その小さな積み重ねが、
古民家を100年先へつなぐ力になります。
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