「うちは昭和56年より前やし…」の声、よく聞きます
お客さまとお話していると、ときどき聞こえてくるのがこんな声です。
「うちは古い家やし、もし地震が来たらちょっと不安で…」
「昭和56年以前の建物って、耐震性が低いって聞いたことがあるんですけど…」
はい、どちらも正直な感想。そして、実はとても大切な“気づき”なんです。
この「昭和56年」というのは、耐震基準が大きく見直された年。いわゆる「新耐震基準」が導入され、以降に建てられた建物は、震度6強~7程度でも倒壊しないことを想定して設計されるようになりました。
それ以前に建てられた住宅は「旧耐震」と呼ばれ、現行の基準から見ると、不安要素が残っているケースもあるのが現実です。
「耐震診断」って何をするの?
ざっくり言えば、その家が「どれくらい地震に強いか」を調べるための“住宅の健康診断”です。
専門の診断士(建築士など)が建物の構造をチェックし、柱や壁の配置、劣化の程度、基礎の状態などから総合的に判断していきます。
一般的な流れは以下のとおりです:
現地調査
間取り図をもとに、実際の家の構造や劣化状況を確認。天井裏や床下をのぞくこともあります。
耐力壁の量や配置の確認
筋交い(すじかい)の有無や配置のバランスを確認。耐震性に直結する要素です。
基礎のチェック
鉄筋コンクリートか?無筋か?ひび割れの有無なども重要な要素です。
老朽度のチェック
白アリ被害や雨漏りなど、構造を弱める劣化部分の有無も診断対象です。
耐震評点の算出
診断ソフトで計算し、上部構造評点という形で数値評価(0.7未満=倒壊の可能性大、1.0以上で一応安全)を出します。
費用と補助制度について
木造住宅の一般的な耐震診断は、相場で 10万円程度。規模や築年数、構造の違いなどで変動します。
ただし、丹波篠山市では、無料での耐震診断を実施しています(2025年4月時点の制度)。
対象は以下のような条件です:
昭和56年5月31日以前に着工された木造住宅
市内に所在し、現に人が居住していること
過去に同様の補助を受けていない建物であること
診断の申し込み窓口は、丹波篠山市役所 地域整備課です。
申込件数には上限がありますが、例年一定数の募集枠が設けられており、申込後は市から委託された診断士が訪問してくれます。
市のホームページに申込書類が掲載されており、郵送または窓口での提出が必要です。
なお、診断後に耐震改修を実施する場合には、補助金の対象となる可能性もあります。
「まずは状態を知ることから始めたい」という方にとって、この制度はとても心強いサポートですね。
実際の診断事例から
あるお施主様は、昭和40年代に建てられた平屋の住まいに長年お住まいでした。
「何となく不安やけど、どこが危ないかよう分からへん」ということで、無料の耐震診断を実施。
結果として、筋交いの不足、基礎のひび割れ、屋根の重さによる負担が明らかになり、「上部構造評点」は0.5台。倒壊の可能性が高いと判定されました。
その後、屋根を軽量なガルバリウム鋼板に変更し、内部の壁をバランスよく補強。
必要最低限の補強でも、評点は1.0を超え、いわゆる「一応倒壊しないレベル」に改善されました。
「心配やったのが、診断して、補強して、ようやく安心に変わった」と奥様の声。
このように、診断と補強は“安心という価値”を手に入れるプロセスなんだと、改めて感じました。
「診断=リフォーム」と決めつけないで
「診断しても、補強費用が高かったら…」
「やると決めたら大ごとになるんでしょ?」
という声も確かにあります。
でも実際は、段階的な補強や屋根だけの軽量化など、負担を抑えて現実的に行える改善策も多いんです。
むしろ、「診断を受けずに、心配を先送りにすること」のほうが、家族にとってはストレスかもしれません。
わたしたちは、“リフォーム前提ではなく、まず診断だけ”という相談も歓迎しています。
「もしものときの後悔」を「今できる安心」に変えるために
地震は、いつ来るかは分かりません。
けれど、「もし来たとき、家族が安心して過ごせる家かどうか」は、今の判断で変えられます。
耐震診断は、見えないリスクを“見える化”する行為。
そして、その結果をもとに「どうするか」を考えるのは、住まい手の自由です。
何より大切なのは、「今の家が、家族の“安心の場所”であるか」を問い直すこと。
子どもに「おうちは安全なん?」と聞かれたとき、胸を張って答えられるか
離れて暮らす親の家に、安心して子や孫を連れて行けるか
災害が来たとき、“逃げる家”ではなく“守ってくれる家”であるか
そういった目線で、家と向き合うきっかけに、耐震診断はなってくれます。
私たちクレアは、丹波篠山市でずっと地域とともに暮らしてきた工務店です。
ご自宅の不安や、制度の活用、補強方法のことまで、なんでも気軽にご相談ください。
「今のままでいいかもしれない。でも、見ておくに越したことはない」
そんな気持ちが芽生えたら、ぜひ一歩、踏み出してみてくださいね。