“田舎は涼しい”って誰が言ったの?移住して気づいた現実【丹波篠山市|有限会社クレア】

― 夏にやってくる、田舎暮らしの“想定外”な落とし穴とは ―


「田舎って、涼しいんでしょ?」

「夏でもエアコンいらずって、聞いたことあるよ?」

「自然に囲まれて、季節を肌で感じられるなんて最高!」


そんな言葉を信じて、移住してくる方はいます。

緑が豊かで、星が近くて、人もあたたかくて。


でも、夏がやってきたとき、思わずこう呟いていると聞きます。


「え、暑すぎない…?」

「虫、多くない…?」

「窓、開けられないじゃん…」


今回は、「田舎=快適」というイメージを胸に移住した方が、

“夏になって気づいたリアルな現実”について、

実体験と地域の声、そして工務店の視点を交えて正直に綴っていきます。

(もちろん、打合せ時にお伝えしていますよ笑)


「こんなはずじゃなかった…」と後悔する前に、

田舎の夏を“想定内”にして、もっと楽しく、もっと快適に。


そんなヒントになればうれしいです。




「自然に囲まれて、のびのび暮らす。」


そんな夢を胸に、都会から田舎へ──

新しい暮らしをスタートした人が、口をそろえて言うことがあります。


「まさか、ここまで暑いとは思ってなかった…」

「思ってた“のどか”と、ちょっと違う」

「この夏、何度クーラーに謝ったことか(笑)」


今回は、田舎暮らしに憧れて移住した方が、夏に感じた“後悔ポイント”をテーマに、

丹波篠山市で実際に聞いたエピソードや、工務店としての視点も交えてご紹介します。


■ 「田舎=涼しい」は過去のもの?


「昔は、扇風機だけで十分だったのにねぇ…」

これは、70代のご夫婦が話していた言葉です。


確かにひと昔前まで、丹波篠山のような盆地や山あいの地域では、

朝晩は涼しく、真夏でも日陰にいればしのげる暑さでした。


でも今はどうでしょう?


夏の日中は35度超えがザラ

夜も25度以上の“熱帯夜”が続く

アスファルトではなく土や草地でも、暑さは逃げない


都市部と違ってヒートアイランド現象は少ないとはいえ、

年々「自然の厳しさ」の方が勝ってきている印象です。


特に日差しが強く、風が抜けにくい土地では、

“体感温度”が非常に高くなるのも、田舎の特徴のひとつです。


■ クーラーの後付け、思ったよりハードル高い?


「夏になってから急いで設置したら、工事費が倍以上かかりました…」

そんな相談を受けたのは、昨年の7月。


中古住宅(古民家)を購入して移住されたご夫婦が、

「やっぱり暑さに耐えきれない!」と、エアコン設置を依頼されたのですが…


壁が土壁で、室内配管ルートが取りづらい

コンセントが非対応(100V→200Vへの変更必要)

ブレーカーが古く、アンペア不足


さらに室外機の置き場所が限られ、追加工事が必要。


結果、機器代より工事費が高くなってしまいました。

「もっと早く相談しておけばよかった」とおっしゃっていました。


また、エアコンは設置できても“効かない”家も多いのが現実です。


特に築年数が古い家では、


  • 断熱材が入っていない
  • 天井裏がスカスカ
  • 窓が大きすぎて熱がこもる


などの理由で、冷房が全く追いつきません。


つまり、田舎の夏を快適に過ごすには、

“エアコンだけ”では不十分な場合が多いということ。


■ 虫の多さに心が折れる人も


「虫が苦手な人は、田舎の夏は覚悟が必要」と言われるのには理由があります。


  • 夜、網戸越しにやってくる蛾やカナブン
  • 朝、洗濯物にくっついているカメムシ
  • 湿気で活発になるムカデやゲジゲジ
  • 自転車のカゴの中で育ってるバッタの赤ちゃん


ここで誤解しがちなのは、「全部が森の中の家だけの話でしょ?」というもの。

実際には、市街地に近い集落や住宅団地でも同じ現象が起きます。


さらに、


  • 築年数が古い家ほど隙間が多く、虫が侵入しやすい
  • 網戸のサイズが微妙に合っていない
  • 換気扇や通気口から入ることも。


つまり、「閉めてても入る」のが田舎の虫事情。


対策としては、


  • 網戸は“張り替え”ではなく“フレームごと交換”が効果的
  • 隙間テープや防虫パッキンで物理的にブロック
  • 紫外線カット型の屋外照明で虫の集まりを減らす


最近は、設置型の電撃殺虫機や屋外用蚊取り器具も進化しています。

「虫と共存する」ではなく「なるべく遭遇しない」方向で整えていくのが現実的です。


■ 湿気+高温 → カビ+ダニ+におい地獄


もう一つ、多くの移住者がつまずくのが“湿気”。


特に夏場は、


気温が高く、雨も多く、窓を開けられず(虫が入るため)、

クーラーもフル稼働できない


という負のスパイラルで、室内は湿気の巣窟に。


「押入れの中がモワッとしてる」

「カーテンの裏にカビが生えてた」

「畳がベタベタする」


そんな現象は、けっしてレアではありません。


一度、梅雨明けに天井裏を確認したら、

断熱材がぐっしょり濡れていてカビていたという事例もありました。


対策としては、


  • 除湿器やサーキュレーターを導入し、空気を動かす
  • カビ対策シートや調湿材を押入れ・収納に活用
  • 思い切って「除湿壁材(珪藻土やエコカラット)」をDIYで施工する方も


「夏の湿気対策」は、“住み心地の質”に直結するポイントです。


■ 見落としがちな“買い物のストレス”


夏になると、意外と多く聞かれるのが

「ちょっとした買い物が面倒すぎる!」という声。


日中は暑くて外に出る気がしない、

近くのスーパーは夕方に混雑する、

郵便局や薬局、病院まで遠い、

自転車では日差しと坂道がキツすぎる。


「コンビニまでクルマで10分」が当たり前の地域では、

ちょっとした用事が“プチ移動”レベルになるのも夏のネックです。


特に高齢の親御さんと同居されている家庭では、

「送迎の負担が倍増する季節」でもあります。


ネットスーパーや宅配サービスをうまく活用する、

もしくは家族やご近所と“買い出しシェア”を検討するなど、

田舎なりの知恵と仕組みづくりが求められます。


■ 暮らしは“工夫力”で変わる


田舎の夏を“耐える季節”にしないためには、

やっぱり“工夫”と“知恵”がものを言います。


たとえば──

草刈りは日陰の多い朝か夕方、バッテリー式で静かに

窓の外にすだれ+遮熱フィルムで直射日光をカット

床下換気扇を後付けして、通気性を改善

犬猫のために「ひんやりタイル」を玄関に敷いてみる


そんなちょっとした工夫の積み重ねで、

「暑くて後悔」が「暑くても快適」に変わるのが、田舎のいいところ。


そして、

「暮らしにあわせて家を整えていく」ことそのものが、

田舎暮らしの醍醐味かもしれません。


■ 「夏に後悔しない田舎暮らし」はつくれる


振り返ってみると、

田舎の夏でよくある“後悔”にはこんなものがあります:


暑さに対して家の性能が追いついていない

虫や湿気、想像以上の自然との距離感

クーラー設置・家電対応がスムーズにいかない

買い物や外出が意外としんどい


「こうしておけばよかった」が夏に集中する


でも、それは「こんなはずじゃなかった」という後悔であり、

“整えることで回避できる後悔”でもあるのです。


田舎の夏は確かに過酷です。けれど、


子どもと一緒に育てた朝顔が満開だったり

ペットが玄関でお腹を出して寝ていたり

雨上がりの空に、くっきりと虹が出ていたり


不便の中に、

都会では味わえない“かけがえのない日常”があります。


こんな言葉が聞けたら嬉しいなと思っています。


「この暑さ、想定外でした。でも、だからこそこの暮らしを愛せるようになったんです。」


いや、ほんとに暑いですけどね、丹波篠山。苦笑