市街化調整区域に家は建つ!?【丹波篠山市|有限会社クレア】

「調整区域って言われてしまって…」というご相談


家づくりの相談をしていると、ときどき同じような場面に出会います。


「親の田んぼの端っこに、小さくていいから家を建てたいんです」

「ネットで見つけた土地が安いなと思ったら、『市街化調整区域』って書いてあって」

「不動産屋さんに『そこは家は建てられませんよ』と言われて、すっかりやる気がなくなりました」


そんな話を聞くたびに、ふくらみかけていた夢の風船が、目の前でしぼんでいくように感じることがあります。


「市街化調整区域」という言葉には、どこか冷たい響きがあります。

“調整”と言われても、何をどう調整されるのかピンとこないですし、

なんとなく「ここはダメな場所」と宣告されたような気持ちになる方も多いと思います。

「市街化しないように調整する区域」といわれることもありますね。


でも、結論から言えば、「調整区域=絶対に家が建たない場所」ではありません。

もちろん、何でも自由に建てられるわけではないのですが、条件しだいではちゃんと「家が建つ」土地もある。

今日のコラムでは、この「条件しだい」の中身を、難しい法律用語をなるべく避けながら、お話ししてみます。


市街化調整区域は「ブレーキ側のエリア」


まずは、ざっくりしたイメージから。

都市計画の世界では、同じまちの中でも、「これからも家やお店を増やしていこう」というエリアと、「むやみに広げず、農地や自然も守りながら様子を見よう」というエリアを分けています。


前者が「市街化区域」、後者が「市街化調整区域」です。

車にたとえるなら、市街化区域がアクセル側、調整区域がブレーキ側。

常にフルブレーキをかけているわけではないけれど、「ここは慎重に」というサインが出ている場所、という感じです。


もともとの考え方として、調整区域は「新しい住宅をどんどん増やすのは控えましょう」というゾーンです。だからこそ、不動産屋さんも工務店も、つい一言で「そこは難しいですよ」と言ってしまいがちになります。


ただ、この「ブレーキ側」のエリアにも、ちゃんと例外のルールがあります。

ここを知らずに「調整区域だから無理だ」と決めつけてしまうのは、少しもったいないことかもしれません。


「原則ダメ、でも例外あり」という世界


市街化調整区域のいちばんの特徴は、「原則はダメ、でも例外はきちんと決めてある」という点です。


たとえば、代々農業をしているご家庭が、自分たちが住むための家を建てる場合。

昔から小さな集落が続いていて、その暮らしを守るために、子世帯が親の近くに家を建てる「分家」のような場合。

あるいは、すでに調整区域の中に住宅が建っていて、それを老朽化や耐震性の問題から建て替えたい、という場合。


こうしたケースは、「全部ダメです」ではなく、一定の条件を満たしていれば、調整区域の中でも家を建ててよい、という仕組みになっています。


ただし、この「一定の条件」が曲者で、中身は自治体ごとに少しずつ違っています。

農家として認められる条件、親世帯との距離や関係性、敷地の広さ、建物の大きさ、建て替えのときの扱い…。

こういったことが、市や町の「運用基準」という形で、それぞれ細かく決められているのが、2025年現在の姿です。


つまり、同じ「分家住宅」の話でも、A市ではスムーズに許可が出るのに、お隣のB市ではハードルがぐっと高くなる、ということも普通にありえます。


ここが、市街化調整区域を難しく感じさせる理由のひとつです。ネットで体験談を読んでも、「その市ならそうだけど、うちの地域では…」ということがどうしても出てきます。


昔の「聞いた話」がそのまま通用しない理由


調整区域の話になると、よく出てくるキーワードが「既存宅地」です。


「昔、親戚が『ここは既存宅地やから、調整区域でも家が建てられる』と言ってた」

「不動産屋さんにそう説明された」といった話を、一度は耳にされた方も多いかもしれません。


ところが、この既存宅地制度はすでに廃止されています。今は、「旧既存宅地」をどう扱うかを、各自治体が独自に基準を作って運用しているのが実情です。

つまり、「登記簿上は宅地だから安心」とは言い切れない時代になっています。

一方で、登記上は田や畑のままでも、条件しだいでは住宅が認められるケースもあります。


加えて、自治体ごとの運用の差も、以前よりはっきりしてきました。

農家住宅にしても、分家住宅にしても、「昔はこうだったらしい」という噂話だけを頼りにしてしまうと、今のルールからずれている可能性が高くなります。


AIやネットが過去最大に発展している2025年の今、いちばん大切なのは、「ネット情報や昔話だけで判断しないこと」。

これに尽きると言ってもいいかもしれません。


最初の一歩は「地番メモ」を持って役所へ


では、「市街化調整区域に家は建つ!?」という問いに、実際の暮らしの中で向き合うには、どう動き始めるのが現実的でしょうか。

私がいつもおすすめしている最初の一歩は、その土地の「地番」をはっきりさせることです。


住所だけでは、役所の方も判断がしづらいことが多いので、登記簿や公図で地番を確認しておきます。売り出しチラシに書いてある「○○町○○付近」だけではなく、一点を指せる情報を手元に用意しておくイメージです。


地番が分かったら、それをメモに書いて、市役所や町役場の「都市計画課」や「開発指導課」に事前相談をします。突然窓口に行くのが不安なら、電話で「事前相談がしたい」と伝えてみても良いと思います。

その時、「市街化調整区域なんですけど、家建てられますか?」だけだと、どうしてもざっくりした返事しか返ってきません。

「〇〇町の△番△の土地で、親の近くに自己用住宅を新築したい」

「今ある家が老朽化しているので、同じ場所で建て替えを検討している」

こういった形で、できるだけ具体的に事情を伝えると、担当の方もイメージしやすくなります。


同時に、工務店や設計事務所の側では、道路との接道状況、上下水道の引き込み、側溝や排水の流れ、造成や擁壁の必要性、近隣との高低差などを一つひとつ確認していきます。

調整区域の土地は、坪単価だけ見ると「お、安い」と感じることが少なくありません。

ただ、道路工事や水道引き込み、盛土・擁壁などに費用がかかると、最終的には市街化区域とあまり変わらない、ということもよくあります。


「ルール上、建てられるかどうか」と、「暮らしやすいか・費用はどのくらいか」を、セットで見ていくことが大切です。


よくある三つの相談風景


ここで、実際の現場でよく出会うパターンを、三つだけご紹介します。

1つめは、「親世帯のそばで暮らしたい」というご相談です。

田舎では本当に多いパターンで、「親の家の向かいの畑に、子どもの家を建てられないか」という話は、毎年のように耳にします。

自治体によっては「分家住宅」や「世帯分離住宅」の枠組みがあり、親世帯との距離や関係が基準を満たしていれば、例外的に住宅が認められる場合があります。

ただ、書類の準備や、農地であれば農地転用の話、将来の相続まで見据えた整理が必要になるので、早めに相談を始めておくと安心です。


2つめは、「すでにある家の建て替え」です。

調整区域の中に昔からの家が建っている場合、「そろそろ耐震性が不安」「バリアフリーにしたい」といった理由で、建て替えの相談を受けることが増えてきました。

ここで大きなポイントになるのが、「その建物が、どのような手続きで建てられたか」です。

当時の許可が残っているのか、昔の制度のもとで、どう扱われていたのか。

古い図面や書類を探しながら、パズルを埋めるような作業になることもあります。


3つめは、「ネットで見つけた調整区域の安い土地」です。

雑種地と書かれた土地や、広さの割に驚くほど手ごろな価格の土地には、たいてい何かしらの理由があります。

家がそもそも建てられない土地なのか、建てられるとしても厳しい条件付きなのか。

そのあたりを確認しないまま購入してしまうと、あとから「こんなはずじゃなかった」となるリスクが高くなります。


どのケースにも共通して言えるのは、「買ってから考える」ではなく、「考えてから買う」ことが、何より大事だということです。


調整区域だからこそ見えてくる景色


ここまで読むと、「やっぱり調整区域って大変そうだな」と感じられたかもしれません。

たしかに、市街化区域に比べると、手続きも時間も、気にすることは増えます。

それでも、「どうしてもここに暮らしたい」と調整区域を選ばれる方がいるのは、やっぱり、それだけの魅力があるからだと思います。


朝、カーテンを開けると一面の田畑が広がっていたり、季節ごとに山の色や空の表情が少しずつ変わっていくのが分かったり。隣家との距離も少しゆったりしていて、家庭菜園や草花、ペットとの暮らしを、のびのびと楽しみやすい環境が多いのも事実です。


もちろんそのぶん、車はほぼ必需品になりますし、スーパーや病院がすぐ近くにあるわけでもありません。雪の日や大雨の日の通勤・通学も、少し気になります。


だからこそ、「調整区域で家を建てるかどうか」は、建物の話だけではなく、「これからどんな暮らし方をしていきたいか」を、家族みんなで話し合うテーマになります。


「ダメかどうか」ではなく、「どうすれば安心できるか」


最後に、タイトルの問いにもう一度戻ります。


「市街化調整区域に家は建つ!?」


答えは、「条件しだいで、建つこともあるし、やめた方がいい土地もある」です。

大事なのは、「ダメかどうか」だけで白黒つけてしまうことではなくて、「建てるとしたらどんな条件が必要なのか」「その条件は、自分たちの暮らしや将来の計画ときちんと噛み合っているのか」そこを一緒に考えていくことだと感じています。


役所でルールを確かめること。

工務店や設計事務所と一緒に、インフラや費用、暮らしやすさを整理してみること。

家族で、「ここで朝晩を過ごす自分たちの姿」を想像してみること。

その積み重ねの先に、「調整区域だけれど、この土地で良かったね」と言える家づくりも、たしかにあります。


もし今、「ここ、調整区域らしいんだけど…」という土地を前に、ちょっと不安になっている方がおられたら、一人でネット情報とにらめっこする前に、地元の工務店や不動産屋、役所の窓口などを、気軽に頼ってみてください。


その相談に付き合うことこそ、私たち地元工務店の、いちばんの役割だと思っています。