高齢の親が住む“思い出の家”と、今こそ向き合うべき理由。

~離れて暮らす家族にこそ伝えたい、耐震診断のすすめ。~


実家に残る親のこと、気になっていませんか?

「親の家が心配です」

「実家の両親が、昔ながらの木造住宅に住んでいて……。

最近は地震のニュースも多いし、本当に心配なんです。」


そんな声を、私たち工務店にはたびたびお聞きします。

そしてこれは、仕事関係なく、同級生たちとの会話にも出てきます。40代の私たちの親は70代以上が多いのです。


離れて暮らしていると、親の家のことが、だんだん「見えない不安」になっていきます。

家が古くなってきていることも分かってはいるけれど、つい後回しになってしまう。


でも、だからこそ今、「住まいの安全」を見直すチャンスかもしれません。


“実家”という、あたたかくてちょっと古い家


誰にとっても、実家は特別な場所です。


お正月に家族が集まった居間、

ふすま一枚隔てた兄弟げんかの思い出、

母が作ってくれた夕ごはんの匂い……。


でもその家が、築40年以上だったとしたら、ちょっと注意が必要です。


昭和56年(1981年)より前に建てられた木造住宅は、

いわゆる「旧耐震基準」で設計されています。


これは、現在のような大きな地震を想定していない設計。

当時は、震度6や7という地震は「想定外」だったのです。


さらに、年月を経て老朽化している家が多い今。

耐震性の不足と劣化が重なると、「地震に弱い家」になってしまうリスクが高まります。


地震が来たとき、家が守ってくれるか?


たとえば、2024年元旦に起きた能登半島地震。

倒壊した家の多くは、築年数の古い木造住宅でした。

中には、高齢の方が逃げ遅れ、家の下敷きになってしまったケースも。


「この年齢になって、いまさら……」

「住み慣れた家を壊すのはイヤ」


そんな親御さんの気持ちも、痛いほど分かります。

でも、それでもなお言いたいのです。


壊れるかもしれない家に、これからも住み続けることは

命をさらしているということ。


どうか、そこだけは一緒に見つめ直してほしいのです。


「耐震診断」で、住まいの“健康チェック”を


では、何から始めればいいのでしょう?


まずおすすめしたいのが「耐震診断」です。

これは、今のお住まいが地震にどれだけ耐えられるかを、専門家が調べるもの。


診断では、こんな点を見ていきます:


  • 建物の築年数や構造(木造か鉄骨造か など)
  • 基礎部分にひび割れがないか
  • 壁の配置や、筋交いの有無
  • 屋根の重さとバランス
  • 建物の傾き  など


また耐震診断は、多くの自治体で補助制度が用意されています。

たとえば、丹波篠山市では、耐震診断にかかる費用の一部を助成してくれる制度があります。


改修が必要となった場合も、工事に対する補助金制度がありますので、費用の負担が軽くなる可能性があります。


こんな“サイン”があったら要注意


次のような状態が見られたら、一度相談してみることをおすすめします。


  • 築40年以上の木造住宅
  • 増築や改築を何度もしていて、建物の形がいびつ
  • 家の中でドアの開け閉めがしにくい
  • 床が少し傾いている
  • 雨漏りやシロアリ被害があった
  • 軟弱地盤のエリアにある


いずれも「住めるけれど、危険かもしれない」状態。

見逃さず、家の“声”に耳を傾けてあげてください。


親にどう伝える?──言い方の工夫で、話しやすく


「お母さん、耐震診断してほしいんだけど」といきなり切り出すと、

「なんで急にそんなことを?」と戸惑わせてしまうかもしれません。


そんなときは、こんな言い方がやさしいかもしれません:


「こないだニュースで見たんだけど、地震でお年寄りの家が倒れたって……

うちもちょっと心配になってさ。診断だけでもしておいたら安心だよ。」


「今すぐ工事するわけじゃなくていいんよ。

ちゃんと見てもらって、様子を知っておくだけでも違うし。」


「家を壊す話」ではなく、「家を守る話」として伝えることが、心の壁をやわらげるコツです。


私たち地元工務店ができること


診断のあと、「どこが危険か」「どこを補強すべきか」が分かります。

なかには、ほんの一部の補強だけで安全性がグッと上がるケースもあります。


工務店として、私たちは無理に工事を勧めることはしません。

必要なところだけ、最小限で安全を守る。それが私たちの役目です。


そしてなにより。

親御さんの家が、これからも安心して暮らせる場所であってほしい。

その思いを、子ども世代と一緒に実現したいと考えています。


“いつか”ではなく、“今”が最善のタイミング


大切な人の命を守るには、「そのうち」では間に合わないかもしれません。


思い出のつまった家を、これからも“安心して暮らせる場所”に。

耐震診断は、その第一歩です。


今、親の家のことを考える時間があるあなたにこそ、動き出してほしいのです。


離れていても、できることはたくさんあります。

まずは一歩、動き出してみませんか?