“一歩ずつ”でも、暮らしはちゃんと始められる~
最近、「古民家に興味があって…」という声をよく耳にするようになりました。
空き家バンクを見ていると、ふと目が止まる、そんな趣のある家が、丹波篠山市にもまだまだ残っています。
でも同時に、「フルリフォームって何千万円もかかるんでしょ?」「興味はあるけど現実的じゃないかも…」という不安も、多くの方が感じておられます。
たしかに、築年数が古い住宅には、
- 構造補強
- 水まわりの更新
- 断熱・耐震の課題
などが山積みです。
でも、それらを“全部まとめて”解決しようとしなくてもいいんです。
今回は、「300万円」という限られた予算で、どこまでのリフォームができるのか。
そして、“自分たちらしい暮らし”を無理なくスタートさせるための考え方を、現場の目線からご紹介します。
■ 300万円、“思ったよりできる”んです
「この予算で、どんなことができるんですか?」というご相談は、とても多くいただきます。
実際には、「全部を一気に」ではなく「必要なところから段階的に」手を入れていくことで、300万円でも“住める状態”をしっかり整えることができます。
たとえば。
- 傷んだ床の補修と断熱材の施工
- コンパクトな最新型キッチンの新設
- トイレ・洗面台の交換で水回りを快適に
- 古い建具の調整や再塗装
- 和室の一部を無垢フローリングに変更
ポイントは、“何に一番優先順位を置くか”。
生活動線や家族構成、これからの暮らし方に応じて、同じ300万円でも、できることは大きく変わってきます。
■ 実例で見る「300万円」のリフォーム
では実際に、過去にお手伝いしたリフォームの一例をご紹介します。
<Case.1>
築約80年の平屋古民家。
夫婦2人とワンちゃん1匹が、セカンドライフの拠点としてご購入。
【工事内容】
・玄関と土間スペースを再構築
・和室2間を洋室化+床下・天井断熱
・簡易キッチンの新設
・汲み取り式トイレを簡易水洗に切替
【工期】 約3週間
【総工費】 約296万円(税込)
「雰囲気はそのままに、寒さと使い勝手だけは改善したい」というご希望に応え、コストを抑えつつ“快適”をつくり出すリフォームを行いました。
「冬も冷えにくくなって、キッチンも使いやすい!」と、引っ越し後の暮らしにもご満足いただいています。
■ “暮らしながら直す”という考え方
古民家は、「一気に完成させる」家ではありません。
むしろ、“時間をかけて育てていく”家だと思います。
最初は、必要最小限だけ手を入れて「まずは住んでみる」。
その中で気になる部分、改善したくなる部分が見えてくる。その都度、少しずつ手を加えていく。
家が変わっていく過程も楽しめるのが、古民家の魅力です。
そしてそれは、地域の人との関わりや、日々の暮らしの中で、自然と家に“愛着”が育っていく時間でもあります。
■ 暮らしに“自分の手”を添える。ワンポイントDIYのすすめ
「せっかくなら、自分の手で少しずつ手をかけていきたい」
そんな方におすすめしたいのが、プロの工事と組み合わせてできる“ワンポイントDIY”。
暮らしを彩る小さな工夫が、古民家との距離をぐっと縮めてくれます。
● 柱や梁のオイル仕上げ
黒ずんだ梁や柱も、少し手をかければぐっと美しく。
蜜蝋ワックスや天然オイルを布で塗るだけで、時を重ねた木肌がよみがえります。
手を動かすうちに、「この柱は私が磨いたんやで」と、家への愛着が深まっていくのを感じられます。
● 障子の張り替え
障子は、自分で手を加えやすいパーツのひとつ。
最近ではアイロンで貼れる和紙や、カラー障子紙も手に入ります。
伝統的な風合いを残しながら、自分らしいアレンジを楽しむのもいいかも。
● 土間の靴収納DIY
広い土間、ちょっと活用が難しい…そんなときは、すのこや木箱を使って可動式の靴棚をつくってみましょう。
床に置くだけで、収納と雰囲気づくりが両立できます。グリーンを添えれば、土間が一気に“お気に入りの場所”になりますよ。
DIYに正解はありません。
完璧を目指さなくても、「自分で手を加えた」という気持ちこそが、古民家と暮らす楽しさを支えてくれます。
■ 補助金の活用でもう一歩前へ
「もう少し手を加えたいけど、予算が…」という方には、自治体の補助制度の活用がおすすめです。
丹波篠山市では、空き家の改修や移住者向けの支援制度が年ごとに設けられており、最大50〜100万円ほどの補助が受けられる場合もあります。
私たちクレアでは、こうした制度を活用したリフォーム提案も得意です。
「ちょっとややこしそう」と感じる補助金の申請も、一緒にサポートいたします。
■ リフォーム?建て替え?迷ったら──
「この古民家、直す価値があるのか?」
この問いに、はっきり答えるのは簡単ではありません。
ただ、次のような条件を満たすなら、再生の価値は十分にあります。
- 柱や梁がしっかりしている(腐食や傾きがない)
- 雨漏りがない、または部分的である
- 基礎の沈下が見られない
- 周辺の生活環境に不便がない(買い物・病院・交通など)
少しでも迷いがある方は、ぜひ一度ご相談ください。
現地調査(無料)をもとに、正直に「できること」「やめておいたほうがいいこと」をお伝えします。
■ “好き”から始まる家づくり
古民家との出会いは、ちょっと不思議です。
中古住宅を買う、というよりも、“物語の続きを引き受ける”ような感覚。
そこに残る空気、木の香り、ゆらゆら揺れるガラス。
そのすべてが、「好き」と思えたなら、もう十分すぎるスタートです。
300万円は、決して小さな金額ではありません。
けれど、“暮らしをはじめる力”としては、思っている以上に大きな可能性を秘めています。
「いつか古民家で暮らしてみたい」
その“いつか”を、私たちと一緒に“今”に変えていきませんか?