見えない不安と、信じられる人の話
「家のリフォームを考えているんですけど、何から始めたらいいか分からなくて…」
そんな声を、日々たくさんいただきます。
そして時々、こんなお話を伺うことがあります。
「以前、リフォームでちょっと嫌な思いをしてしまって…」
「工事が終わってからも、なんだかずっと不安なんです」
そう。住まいのリフォームには、期待と同じくらい「不安」もつきまといます。
今回はその“リフォームの不安”と、そこに忍び寄る「詐欺まがいの手口」、そして、それでもなお安心して頼れる業者の見極め方について、工務店の社長として、ひとりの暮らしの伴走者として、お話ししてみたいと思います。
「お宅の屋根、今すぐ直さないと危険ですよ」
これは、実際に丹波篠山市で起きた相談事例の一つです。
あるご高齢のご夫婦のもとに、突然やってきた見知らぬ業者。
いきなり開口一番、「屋根の瓦がずれていて、このままだと雨漏りしますよ」と警告されたそうです。
急に不安になって見上げると、確かに何かズレているようにも見える。
「今ならたまたま別の現場から職人が戻ってきてて…今日中にやれば30万円で済みますよ」と畳みかけられ、焦って契約。
けれど後日、信頼できる近所の瓦屋さんにも見てもらったところ、「まったく問題なし」。
つまり、まったく必要のない工事だったということです。
不安に付け込む「急かし」と「脅し」
悪質な業者に共通するのは、“判断力を鈍らせる”テクニックです。
「今日中に決めてくれたら足場代を無料にします」
「このままでは大きな事故になりますよ」
「近くの現場で出た余り材があるから、今なら格安でできます」
一見お得に見えるこれらの言葉は、実は“冷静に考える時間”を奪うためのもの。
人は、不安になったとき、ついその場で答えを出したくなる。
そこにつけ込まれてしまうんです。
本来、リフォームはじっくり考えるべきもの。
家族と相談し、生活スタイルや予算と照らし合わせて検討する時間が必要です。そこを「今だけ特別」や「すぐ決断を」の言葉で急かす業者は、慎重に見極める必要があります。
「誰に頼んでいいのかわからない」という迷い
リフォームに不安がつきまとうのは、金額の大きさだけが理由ではありません。
もう一つの大きな要因は、「誰に頼めば安心なのかが分からない」ということ。
テレビCMで見かける大手ハウスメーカーもあれば、インターネット検索で出てくる格安業者もある。中には、口コミだけでひっそりと営業している地元の工務店もあります。
この“選択肢の多さ”が、かえって不安を呼んでいることもあるのです。
特に、都市部から移住してきた方や、空き家を初めて扱う方にとっては、地元業者との接点もなく、どこに相談していいのか分からない。
だからこそ、悪質業者の“親切そうな笑顔”に、つい頼ってしまう…。
「信頼できる業者かどうか」のシンプルな見極め方
では、どうすれば信頼できる業者を見つけられるのか?
答えは、意外とシンプルです。
事務所や代表者の所在地が明確かどうか
→ きちんとしたホームページがあり、Googleマップで確認できるか。
施工実績が具体的に紹介されているか
→ 「どの地域で」「どんな工事を」「誰のために」行ったかが分かると安心です。
しつこい営業をしてこないか
→ 「すぐ契約を」と迫ってくる業者は要注意。
話を聞いてくれるか、説明を噛み砕いてくれるか
→ 難しい言葉を並べるより、“こちらの生活目線”で話してくれる人を選びましょう。
アフターフォロー体制が明記されているか
→ 工事が終わってからが本当のお付き合いの始まり。そこを大切にしている業者こそ信頼できます。
地元の工務店ができる「小さな信頼」の積み重ね
私たちのような地元密着の工務店は、豪華なパンフレットも、立派なモデルハウスも持っていません。
でも、地域の方にとっては、ずっと“顔が見える関係”でありたいと思っています。
「お風呂の扉がうまく閉まらなくなって…」
「廊下のきしみが気になるんです」
そんなご相談にも、できる限り足を運びます。
それは、「今すぐ売り上げになる仕事」ではなくても、「今後も頼ってもらえる関係づくり」だから。
家というのは、10年後、20年後にまた手を加えるものです。
だからこそ、今日の小さな信頼が、未来の大きな安心につながるのだと思います。
「リフォームって、ちょっと怖い」と感じているあなたへ
リフォームという言葉に、どこか身構えてしまう方にこそ、伝えたいことがあります。
・リフォームは“怖いもの”ではなく、“暮らしを見直すチャンス”です
・大切なのは「納得しながら進められる」かどうかです
・そして、「相談できる相手がいるか」が、何よりの安心です
わたしたちは、無理に契約を迫ったりはしません。
場合によっては、「まだリフォームしなくても大丈夫ですよ」とお伝えすることもあります。
あるいは、「それならDIYで十分かもしれません」とご提案することもあります。
「頼まれたからやる」ではなく、「一緒に考える」存在でありたい。
そんな思いで、毎日仕事に向き合っています。
暮らしのそばに、いつでも話せる相手を。
家を守ることは、自分たちの暮らしを守ること。
けれど、家のことで判断に迷ったとき、家族や友人に相談するのと同じように、“ちょっと聞ける工務店”がそばにいると、心の余裕が生まれます。
「この見積もり、高すぎる気がするけど、妥当?」
「こんな営業を受けたんだけど、どう思う?」
そんな声に、いつでも耳を傾けられる存在でいられるように。
これからも、地域の暮らしの“よき伴走者”として、皆さまの安心と信頼を育んでいけたらと思います。