― サツキとアリスと、我が家の“開けゴマ大作戦” ―
夏の夜、ふとした違和感でふり返ると、そこにはサツキ。くわえていたのは…小さなカエル!
「え?どこから?」「え、網戸…開くの?」「お風呂の引き戸も!?」
今回はそんな我が家の実話をもとに、ペットの“脱走防止”について、建築のプロとして、そして一飼い主としての視点から、こっそり実践している工夫と考え方をお話しします。
◎ サツキ(黒猫)、初めての夏に大脱走
我が家の黒猫・サツキ(通称サッちゃん)は、好奇心と運動能力のかたまりです。
初めて迎えた夏、不思議なことが起きました。なぜだか毎日のように、家の中に小さなカエルがいる…。居室の窓は開けていなかったので、「誰かと一緒に玄関から入ってきた?」程度に思っていました。
しかし数日後、ふと浴室の小窓を見ると、網戸が10cmほど開いている。
そして、なんとなく予感がして、「サッちゃーん?」と呼ぶと、暗闇からサツキが飛び込んできました!! くわえていたのは…見たことあるような、小さなカエル!
まさかの“連日持ち込み犯”はサツキだったのです。
我が家の浴室の網戸は引戸型。しかもその入口には3枚引き戸。まさか猫が開けるとは思ってもみなかったのが、こちらの油断でした。
しかも今では(というかすぐに)、リビングや脱衣室の引き戸(ハイタイプの2400mm木製戸も)も、樹脂サッシ窓も――、余裕のよっちゃんで開けることができます。驚
ちなみに、我が家の犬・アリス(シェルティ―)も、1階の引き戸、お風呂の引き戸は上手にあけます。きっちり閉まっているときは、時間がかかりますが。
あと、階段は普段登れず、緊急事態(雷とか)のみ、頑張ってあがっています(そして自分で降りられない)
◎ 脱走は「うちの子には無理」が一番キケン
「うちの子は小柄だし」「そんな器用じゃないし」と思っていた我が家でも起きた脱走劇。
ペットたちは毎日、飼い主の行動をじっと見ています。扉の開け方、網戸の開閉、人の動き。
とくに猫は「見たものを真似る力」があり、犬は「成功体験を繰り返す」ことで学習します。
つまり、一度でも偶然に開いた、押せた、飛び越えられた…となると、そこからは「習得済みのスキル」に。
この先は「やらないかもしれない」ではなく、「いつでもできる」状態になります。
すごいもんです。
◎ プロも実践!脱走防止の小技8選
1. ハンドルや取っ手を「開けにくい形」に交換
ペットが“手や鼻で動かせない形状”に変えるだけでも効果があります。
- レバーハンドル → 丸ノブ、縦バーへ
- 引き戸の取っ手 → 掘り込み型に
ただし、この方法には注意点があります。
人間も、というか人間こそその建具を使用します。つまり開けるのに1つ作業がくわわる。
高齢の家族や子どもがいる場合、日常動作に支障が出ることも。
☑ ️ ポイント:「誰にとって使いやすい家か」を考え、バランスをとる。
2. 網戸や引き戸に「わずかに抵抗を加える」
- 戸車の調整で「重く」する
- レールにフェルトや摩擦素材を貼る
サッと開けられると“成功体験”になりますが、ちょっと重たいだけで諦めることも。
3. ストッパー&補助ロックで「開けたつもり」を防ぐ
- 引き戸や窓にフック錠・補助錠を取り付け
- 上部ロックで「見えない位置」に設置
- 特に猫は下の方しか見ていません。上部の鍵は非常に有効です。
4. 自作フェンス・見えない柵で「境界線」を作る
- ベビーゲートやつっぱりポール式フェンス
- 板を立てかけるだけでも効果あり
犬には「ここはダメ」という“見た目の線”が有効。
小型犬や猫にも有効な場合があります。
5. 動き出しセンサーで脱走を「音で警告」
- 窓や扉が開いたときに音が鳴るセンサー
- 人感センサーライトも有効
出入口に設置するだけで、脱走の瞬間をキャッチしやすくなります。
6. 網戸ロックの強化と"補助バー"の設置
網戸には、元々あるストッパーに加えて
- 金具式の補助バー
- スライドストッパー
を設けておくと、グッと安全性が上がります。
7. 扉や窓の「開けられる方向」を逆にする
- 猫が引くタイプの扉は「押すタイプ」に変更
- 押すのが難しいよう、内開き→外開きへ(部屋の使い勝手と要相談)
物理的に「開けにくい方向」にすることは、非常に効果的な対策です。
8. 開けられた実績を記録する「脱走日誌」
- 写真を撮る
- 開けた痕跡を日付で記録する
可視化することで、再発防止に向けた家族の意識が高まります。
◎ 我が家の実践例と“その後”
サツキの脱走事件を機に、我が家では以下の対策を行いました。
窓は開けません (笑)
ちなみに、我が家は【地中熱利用換気システム】を利用しているので、家の中の空気は常に循環(一部排気)しております。
もし、簡単な対策をしなくてはいけなくなったら、こんなことができるかな。
- お風呂の引き戸:上部フック錠+レールにフェルト
- 網戸:開口側に金属ストッパーを追加
- 1階の引き戸:掘り込み取っ手+マグネット錠
- 犬用に階段前に突っ張り式フェンス
我が家のスタイルには合わないので、これらは実施していませんが、これらの対策が、ペットの安全を守る要素が多いならば、ぜひすべきかと思います。
最近、脱走は激減。ですが、油断なりません。
サツキは今も、ときどきサンルームが網戸になっているタイミングで腕を伸ばし、「開くかな?」と実験中しては、見つかっています。
つまり、対策は“油断しない仕組み”と“日々の観察”の両立が大事だと実感しています。
◎ 「快適」と「安心」のちょうどいいところを見つけよう
家は家族みんなの場所。
ペットにとっても「自由でいたい」、人間にとっても「使いやすく安全でいたい」。
だからこそ、脱走防止は「不便との戦い」でもあります。
鍵をかけすぎると、人が出入りしづらい
使いづらい取っ手は、家族のストレスにも
フェンスだらけでは、見た目も美しくない
すべてを完璧にするのではなく、「ここだけは譲れない場所」を見極めて、ちょうどいいバランスを探すこと。
これは、設計段階から考慮できることであり、暮らしながらも改善できることでもあります。
脱走防止は愛情のかたち
サツキとアリスが教えてくれたのは、
「うちの子に限って」は通用しない、ということ。
今日、玄関の取っ手をチェックしてみてください。
お風呂の網戸、ちょっと開けやすくなっていませんか?
家づくりに正解はありません。
でも、「一緒に暮らす誰かのために考えること」こそが、暮らしを豊かにする第一歩です。
しっぽのある家族と、ちょっと笑って、ちょっと安心できる日々を。
建築のプロとして、そしてペットと暮らす仲間として、
あなたの毎日をそっと支える提案を、これからも続けていきたいと思います。