税制優遇の違いとこれからの家づくり
最近、「省エネ基準適合住宅」や「長期優良住宅」という言葉を耳にすることが増えてきました。これらは、単なるラベルではなく、私たちの暮らしやお財布にもしっかり影響を及ぼす“重要な性能表示”でもあります。
特に新築住宅を購入する際、税制面での優遇措置に大きく関わってくるため、建築・不動産業界に携わる者としても、施主の皆さんには正しく理解していただきたいと思っています。
今回は、両者の違いと、それぞれが受けられる税制優遇制度について、わかりやすく解説します。
■「省エネ基準適合住宅」とは?
省エネ基準適合住宅とは、建築物省エネ法に基づいた断熱性能や一次エネルギー消費量の基準を満たした住宅のことを指します。
要するに、「夏は涼しく、冬は暖かい」「冷暖房に頼りすぎずに快適に過ごせる」といった住宅です。
2025年度からは、省エネ基準への適合がすべての新築住宅で義務化されており、今後は"当たり前の性能"になっていくと見られています。
【ポイント】
- 認定は不要。設計・性能計算により確認されればOK
- 対象の税制優遇:住宅ローン控除の上限引上げ、フラット35Sの金利優遇(Bプラン)など
■「長期優良住宅」とは?
長期優良住宅とは、国が定める技術的基準を満たし、所轄行政庁から認定を受けた住宅のことです。
「長く良好な状態で使用できる」ための要件をクリアした家で、耐震性・劣化対策・維持管理のしやすさ・省エネ性能など、総合的に高い基準が求められます。
丹波篠山市でも、新築時に長期優良住宅の認定を取得される方が徐々に増えています。
【主な認定要件】
- 耐震等級2以上(基本的には等級3を推奨)
- 劣化対策等級3
- 省エネ基準に適合
- 維持管理計画の提出(劣化対策・点検など)
■住宅ローン控除の違い
2024年度時点での制度を前提にすると、住宅ローン控除の上限額に大きな差が出てきます。
- 種類
- 借入限度額
- 控除期間
- 控除率
で、示していきます。(表がアップできず、読みにくくて申し訳ありません)
- 長期優良住宅
- 5,000万円
- 13年
- 0.7%
- 省エネ基準適合住宅
- 4,500万円
- 13年
- 0.7%
- 一般の新築住宅
- 3,000万円
- 13年
- 0.7%
※年収や入居年によっても若干の変動があります。
つまり、同じローンでも「長期優良住宅」の方が、より多くの控除を受けられるという仕組みです。
■固定資産税の優遇措置
さらに見逃せないのが、固定資産税の軽減措置の期間。
一般の新築住宅の場合、3年間(120㎡まで)なのに対して
長期優良住宅は5年間(120㎡まで)となります。
省エネ基準適合住宅については、固定資産税の軽減には影響しません(=一般住宅と同じ)ので、固定資産税の観点では長期優良住宅がより優れています。
■登記に関する税制優遇(登録免許税)
不動産の登記にかかる登録免許税にも、長期優良住宅は優遇措置があります。
所有権保存登記:通常0.15% → 優遇0.1%
所有権移転登記:通常0.3% → 優遇0.1%(住宅用家屋証明が必要)
※省エネ基準適合住宅は、登録免許税の優遇措置はありません。
■補助金制度にも違いが
毎年内容が変わるため要確認ですが、「こどもエコすまい支援事業」や「先進的窓リノベ事業」など、多くの補助金で長期優良住宅が優遇対象になることが多い傾向です。
また、ZEH(ゼロエネルギーハウス)やBELS認証と合わせることで、さらなる補助金加算も見込める場合があります。
■じゃあ、長期優良にすべき?
長期優良住宅はメリットだらけ……というわけではありません。
【注意点・デメリット】
- 行政による認定申請が必要で、期間と費用(設計審査・申請代など)がかかる
- プランに制限が出る場合もあり(柱直下率、開口幅制限など)
- 着工スケジュールに影響する可能性も
一方、省エネ基準適合住宅は、「最低限、これからの時代に合った住宅性能を備えている」と言える仕様であり、ローコスト住宅や企画住宅などでも対応しやすい点が魅力です。
未来への投資として、家づくりを考える
これからの時代、「性能表示」が家の価値に直結するようになってきます。
長く住むなら、光熱費も抑えられ、税制面でも優遇があり、将来売却時の資産価値にもつながるような家づくりが、真のコストパフォーマンスの高い選択と言えるでしょう。
もちろん、すべての家が長期優良住宅である必要はありません。
でも、私たち工務店としては、施主様のライフプランやご希望を伺いながら、どこまで性能を高めるべきか、費用とのバランスを一緒に考えていけたらと思っています。
家づくりにおける「性能の選択」は、未来への“投資”でもあります。税制優遇という目に見えるメリットも、ぜひ活用しながら、賢い選択をしていただければと思います。