とうもろこしと田舎暮らしの、ちょっと幸せな物語
とうもろこしと田舎の夏
「トトロに出てくる畑のとうもろこしみたいに、ぐんぐん伸びる野菜を育ててみたい。」
そんな夢を子どもの頃に抱いた方も多いのではないでしょうか。
とうもろこしの大きな葉が風にそよぎ、夏の太陽を浴びてまっすぐ伸びていく姿は、まさに“トトロの田舎”の風景そのもの。
実際に畑に立つと、その迫力と生命力に圧倒されます。
私は工務店の代表でありながら、とうもろこし農家としても活動しています。(特に父が)。
自宅の家庭菜園ではなく、もう少し大きな畑で本格的に栽培・販売をしているのですが、
それでもとうもろこし畑に立つたびに、幼い頃の景色を思い出すのです。
今日は、家庭菜園でとうもろこしを育てたいと考える方に向けて
・とうもろこしの魅力
・育てるコツ
・田舎暮らしのリアルな側面
を織り交ぜながら、楽しくお伝えしたいと思います。
とうもろこしを家庭菜園で育てる魅力
とうもろこしは、夏のごちそうの代表選手。
スーパーで見かける大きくて甘いスイートコーンはもちろんおいしいですが、
自分で育てたとうもろこしは別格です。
黄色の粒だけになったパウチしてあるものではありません。
その成長スピード、背丈の高さ、葉の広がり方は圧倒的で、
小さな畝でも「夏の主役」と呼びたくなる存在感があります。
1本でもしっかりした背丈になりますが、数本まとめて植えると
畑の中がまるでとうもろこしの林のように変わります。
その中を歩くと、トトロの世界を思い出すような気分に浸れるのです。
また、映画「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台のように
とうもろこし畑に囲まれる体験は、なかなか他の作物では味わえません。
自分で種をまき、大きく育つ姿を見守りながら、
夏の風景を体感できる。
それは、とうもろこし栽培の大きな魅力です。
家庭菜園で育てるためのポイント
とはいえ、とうもろこしにはクセもあります。
家庭菜園で挑戦するなら、以下の点を意識すると失敗しにくいです。
日当たりがとにかく大事
太陽をたっぷり浴びるほど立派に育つ作物なので、
一日中しっかり光が当たる場所を選びます。
風通しと防風対策
150〜200cmと背が高くなるため、強風や台風には要注意。
支柱を立てる、防風ネットを張るなどの転倒防止策が必要です。
肥料のバランス
栄養をどんどん吸収するので肥料は多めが基本ですが、
窒素が多すぎると葉だけ育ち「つるぼけ」になることも。
控えめにスタートして様子を見ながら追肥するといいです。
受粉の工夫
とうもろこしは風で受粉しますが、
風が弱いと実が入りにくくなるため、
穂を軽く揺すって人工授粉を手伝ってあげるのがおすすめ。
収穫直前の大敵:鳥と虫
とうもろこし栽培で誰もが悩むのが、収穫直前の鳥と虫の攻撃。
私自身、毎年この攻防に苦労しています。
特にアワノメイガ(蛾の幼虫)は、とうもろこし農家泣かせの代表格。
穂先から侵入して実を食べ荒らしたり、何重も葉を貫通して実に辿り着いて、おいしそうに食べています。
防虫ネットをかけたり、穂先のチェックをこまめに行い、
もし見つけたらすぐに駆除することが大切です。
さらにもうひとつの強敵がカラス。
これが本当に賢い。
人間が「そろそろ収穫かな」と思うその瞬間を察知して
先に食べてしまうんです。
実は私も、何度も先を越されて悔しい思いをしました。
ネットをかけたり、テグスを張ったりと、模擬鷹を設置したり、
地道な努力でなんとか守っていますが、
彼らとの知恵比べは毎年恒例の“夏の風物詩”のようなものですね。
ヤングコーン
あと、1本の苗から2,3個の実がなりますが、我が家は甘く大きな実にするために、実が小さいうちに間引いています。間引いたものは「ヤングコーン」として、湯がいてマヨを付けたり、素揚げにしたりして食べます。これはこれで、とても美味しいのです
娘ととうもろこしの思い出
とうもろこしは、収穫してすぐに食べるのが一番おいしい野菜です。
収穫直後なら、生でも甘く、香りも濃厚。
私の娘も小さい頃からこの「丸かじりとうもろこし」のファンで、
保育園のお迎えの帰りに畑に寄っては、
その場で皮をむいて豪快にかぶりついていました。
口いっぱいに甘い果汁をほおばり、
「おいしい!」と笑顔を見せる姿は、
田舎暮らしならではの、誇らしい思い出です。
最盛期の直売風景と地域のつながり
収穫が最盛期を迎えるころには、
私の畑の中で採れたてのとうもろこしを産地直売しています。
これが毎年の恒例イベントのようになっていて、
地元の方やSNSで情報を知った方が朝から並んでくださるほど。
最近では春先から予約で埋まってしまい、
当日分も開始数時間でほとんど完売してしまうほどの人気になりました。
「畑のすぐ前で買えるなんて最高!」
「新鮮さが段違い!」
「朝買ったのが美味しくて、もう一度買いに来た!」
と声をかけてくださるのがとても励みになります。
農家としてだけでなく、
田舎暮らしの良さを届ける場としても、大切な取り組みだと感じています。
トウモロコシと我が家の愛犬アリス
そして、余談ですが。
我が家の愛犬・シェルティのアリスもとうもろこしが大好物。
私たちが畑から採ってきて食べ始めると、
すぐに気づいて寄ってきて、
「私にも!」とばかりに目を輝かせます。
不思議なのは、教えたわけでもないのに
人間と同じようにとうもろこしを横からかじるんです。
まるで人間の子どもが食べるかのように上手にかじっていく様子は、
見ていて笑ってしまうほど。
家づくりととうもろこしの意外な共通点
少しだけ、工務店としての立場からの話もさせてください。
とうもろこしは、
「根をしっかり張り、まっすぐ伸びていく」
という特徴があります。
これは家づくりにも通じるところがあると感じます。
家も、土台がしっかりしていないと強い風や災害に耐えられませんし、
最初の設計や基礎の部分でその後の暮らしやすさが変わってくる。
しっかりとした基礎と構造があってこそ、
その上で自由に個性を伸ばせる。
とうもろこしのたくましい成長を見ると
住まいの大切さを改めて思い出します。
すこし、こじつけが過ぎましたかね(笑)
ただ、家も畑も、周りの景色に溶け込む存在であることが理想です。
とうもろこしが地域の景観を支えるように、
家も地域に根ざして暮らしを支える。
どちらも、人と自然の中で共存していく大切な要素だと思っています。
「トトロの世界のように、夏の光の中で背の高い緑の葉に囲まれる。」
「フィールド・オブ・ドリームスのように、人が吸い込まれるような畑。」
とうもろこしには、そんな不思議な魅力があります。
種をまいて、日々のお世話をしながら成長を見守り、
収穫の喜びを味わう。
そのプロセスには、田舎暮らしの豊かさが凝縮されていると思います。
家庭菜園でとうもろこしを育てれば、
小さな区画でも“田舎の夏休み”のワンシーンを再現できるはずです。
お子さんやお孫さんと一緒に植えて、
収穫して、その場でかじる――
そんな経験は一生の思い出になるでしょう。
私にとってとうもろこし畑は、
家族の成長や季節の移ろいを感じさせてくれる大切な場所です。
これからも工務店として家をつくりながら、
とうもろこしのようにまっすぐ育つ暮らしを応援していきたいと思います。
ぜひこの夏、みなさんも“夏の主役”にとうもろこしを育ててみませんか?
トトロやフィールド・オブ・ドリームスのような小さな感動を、
家庭菜園の中で感じられると思いますよ。