「今さら補強しても意味ないですよね?」
「築40年以上の家なんですけど、耐震リフォームって、実際どうなんですか?」
最近、お客様との打ち合わせや現地調査のなかで、こんなご相談をよく受けます。
特に2025年のこの夏は、国外ではありますが地震が頻発していて、心配の声がよりリアルになっている気がします。
でも同時に、こうした“耐震への不安”の裏には、「やったほうがいいのはわかってる。でも…」という、心のブレーキも見え隠れします。
費用のこと、工事の手間、築年数の不安。
だからこそ今回は、現場で多くの家と向き合ってきた立場から、「耐震って、意味あるの?」という問いに、真正面からお応えしたいと思います。
季節は関係ない──“夏でも揺れる”という現実
耐震といえば、なぜか冬のイメージがありませんか?
たしかに阪神・淡路大震災(1995年1月)も、能登半島地震(2024年1月)も、寒い季節の朝に発生しました。
でも実際には、地震は季節に関係なく起こります。
2007年の新潟県中越沖地震は7月。2011年夏の福島県浜通り地震も、真夏の発生でした。
最近では、海外でも7月〜8月に大きな地震が連続しており、「暑いから安心」というのはただの錯覚にすぎません。
科学的に見ても、地震の発生は地下のプレート活動によるもので、気温や季節とはほぼ無関係。
むしろ、真夏に停電や断水が起こると、熱中症のリスクも高く、**夏こそ「災害に弱い季節」**とも言えます。
「意味あるの?」と思う理由は?
耐震リフォームに限らず、家の見えない部分にお金をかける工事って、正直ピンときづらいですよね。
内装のリフォームなら見た目も変わるし、使い勝手もよくなる。キッチンやお風呂の入れ替えなら、「快適さ」が目に見えます。
でも耐震はちがいます。
筋交いや金物、壁の裏の補強…。外からはほとんど変化がわかりません。
「本当にこれで安心になるの?」「こんなに費用かけて意味ある?」
そう思うのは、ごく自然なことです。
でも、命を守るのは“見えない部分”です。
私がこの仕事を始めて以来、一貫して思っているのは、「家の安心は、地味な仕事の積み重ねから生まれる」ということ。
家は、地震の衝撃を受けたとき、外観ではなく構造が真っ先に問われます。
柱と梁の接合部、壁の耐力、屋根の重さ。これらが整っていなければ、一瞬でバランスを崩し、倒壊へとつながってしまいます。
阪神・淡路大震災で自宅が全壊した方からこんな話を聞きました。
「家族は無事だったけど、あの朝、家が音を立てて崩れるのをただ見てるしかなかった。補強なんて、どこか他人事だったんや」
そう、意味があるかどうかを決めるのは、地震が起きた“その瞬間”なんです。
それまでは“効果が見えない”工事でも、その一瞬がすべてを変えます。
古い家でも、補強は「意味ある」
築年数が経っている家に住んでいる方ほど、「もう古いから直しても無駄かも」とおっしゃいます。
でも、これは半分正解で、半分間違いです。
確かに、傷んだ柱や基礎の状態によっては、できる補強に限界がある場合もあります。
でも逆にいえば、補強できる余地がある限り、倒壊のリスクを下げることは可能なのです。
たとえば…
- 屋根を軽量化する(瓦→ガルバリウムなど)
- 柱の接合部を金物で補強する
- 耐力壁を増やす
- 床の剛性を高める(根太の補強)
など、段階的に進められる方法もあります。
全部を一度にやらなくても、「今できること」から着手すれば、地震への備えは確実に前進します。
夏に工事、実はやりやすい時期です。
「暑い中で職人さんも大変でしょうし、夏に工事なんて…」
というお気遣いもいただきます。
でも実は、夏は意外と工期の組みやすい時期でもあります。
春・秋は新築や大規模リフォームの繁忙期。冬は雪や霜で外工事が制限されることも多い。
その点、夏は天候が安定し、日照時間も長いため、効率よく工程を進めることができます。
あまりにも熱い夏場の工事は「早朝スタート・午後早上がり」で職人さんの負担を軽減しつつ、しっかり作業を進められる体制も整えています。
工期が短縮できる=お客様の負担も減るということ。
さらに、台風シーズン前に補強を済ませておけるというメリットもあります。
費用のことも、ちゃんと伝えたい
耐震リフォームの費用は、家の規模や内容にもよりますが、一般的には以下が目安です。
- 一部補強(壁・金物)……約50万〜100万円
- 屋根の軽量化+接合部補強……約150万〜300万円
- 全体補強(耐震等級向上レベル)……約300万〜500万円超
決して安い買い物ではありません。
でも、補助金制度をうまく活用すれば、自己負担を大きく抑えることが可能です。
丹波篠山市でも、耐震診断や耐震改修の補助制度があり、毎年一定の予算枠で募集が行われています。
こうした制度を使って「やらなきゃいけない」を「やれるかも」に変えることも、私たちの仕事の一部です。
“いつか”は、“今”じゃない
「そのうちやろうと思ってました」
「ちょうど考えてたところで…」
地震後に耳にする、胸が苦しくなる言葉です。
でも、本当は誰も悪くありません。
家のことって、日々の暮らしの中では後回しになってしまうもの。
それでもやっぱり、“備えていたかどうか”が、その後の暮らしを大きく分けてしまうんです。
「意味ある?」の答えは、きっとこうです。
「やってよかった。安心して眠れるようになった」
これが、耐震リフォームをされたお客様の声で一番多い言葉です。
誰も「工事して正解だった」と思う日は、地震が来たときかもしれません。
でも、地震が来なかったとしても、“備えてある”という安心感は、日々の暮らしの中で確実に支えになってくれる。
「耐震って意味ある?」
僕の答えは、はっきりしています。
“命を守る工事”に、意味がないなんてことは絶対にありません。