はじめに|丹波篠山市で使える“空き家・相続”に関する支援制度について
家のこれからを考えるとき、ひとつ頼りになるのが「制度の力」です。
丹波篠山市では、空き家を「そのまま放置せず、ちゃんと次の形へとつなぐ」ための支援がいくつも用意されています。大きく分けると、
- 家をなおして使う(再生・改修)
- 家を解体して土地として使う
- 誰かに住み継ぐ・貸す・譲る
- 相続手続き・登記そのものを進める
といった動きに合わせて、サポートが受けられる可能性があります。
登記が終わって「家を動かせる」状態になった今だからこそ、
ここで少しだけ、代表的な制度を紹介しておきます。
● 空き家や古い家を、改修して活かしたい場合
「丹波篠山暮らし定住住宅補助金」
空き家バンクに登録されている物件を購入したり借りたりして、改修して住む場合、
その工事費の一部が補助される制度です。
特に、Uターン・Iターン・子育て世帯などには支援が手厚い傾向があります。
住み継ぐ決断をしたときに、その負担を少し軽くしてくれる制度です。
● 活用の前に「まず試してみたい」場合
「お試し滞在支援」
いきなり「住む」と決めるのは、やっぱり勇気がいるものです。
この制度は、市内に用意された“お試し住宅”に短期間滞在して、
実際の暮らしのリズムや空気感を確かめることができるものです。
「迷っているなら、一度、暮らしてみる」という選択ができる。
● 解体して土地として新しく使いたい場合
「空き家解体に関する補助制度」
老朽化が進み、修繕よりも解体が現実的な場合、
解体費用の一部を補助できることがあります。
「壊す」は、“手放す”ではなく、“次へ進めるための一手”です。
● 登記や名義の整理から進めたい場合
「相続登記・遺言書作成などを支援する制度」
家を動かすには、まず「誰の家なのか」を明確にすること。
そのための手続きにかかる負担を、少し軽くできる制度です。
ここが整うと、家はようやく「未来に向けて選べる家」になります。
上記の制度は、“条件に合えば使えるかもしれない” くらいの距離感で構いません。
大切なのは、知っていること。必要なときに、相談できる相手がいること。
この2つです。
補助金や制度は「家族が決めた選択に、そっと手を添えてくれるもの」。
決めるのはあなたとご家族です。でも、その決断を支えることはできます。
クレアは、制度の説明や申請手続きの進め方、補助金が使えるかどうかの判断など、
最初の“どこから始めればいい?”のところから一緒に考えます。
どう使うか迷っている家があれば、その迷いごと、いつでも持ってきてください。
ゆっくり、話しましょう。
“動かせるようになった家”を、どう活かしていくか。
家には「匂い」があります。
雨が降る前に土が湿るような、夏の夜、縁側の風鈴が小さく揺れるような、冬のこたつに家族が足を寄せていたあのぬくもりのような。
相続登記を終えた家は、その“匂い”をまとったまま、静かにそこに佇んでいます。
長い間、家は「どうにもできないもの」として置かれていたかもしれません。
名義が祖父のまま、誰のものでもなくなってしまったような状態で、心のどこかに引っかかったまま、時が流れていた。そんな方が多いと思います。
でも、相続登記を終えた今、その家はもう「止まっている家」ではありません。
家は“選べる家”になります。
住むか、壊すか、手を加えるか、人に託すか。
家の未来を、こちらから決めていい状態になったということです。
登記はただの手続きではありません。家が再び「家族の話題になる権利」を取り戻した瞬間なんです。
ここからが、いよいよ本題です。相続登記が終わった、その先の選択と、家の未来の話。
家と向き合う時間は、記憶をそっと撫でるようなもの
家と向き合うというのは、図面を見たり、費用を比べたりするだけではありません。
ドアを開けて、少しほこりっぽい空気を吸い込みながら、静かに歩いてみること。
ふと、廊下の壁に残る傷に目が止まるかもしれません。子どもが背丈を刻んだ線、鉛筆の跡。
押し入れの中には、あの日の毛布の香りがまだ残っていることもあります。
「この家には、確かに暮らしがあったんだな」
そう思うだけで、胸の奥がじんとあたたかくなることがあるでしょう。
家は、単に“物体”ではなく、時間を保存している器 みたいなもの。
だからこそ、その器をどうするかを考えるとき、少しだけ胸がきゅっとなるのは当たり前なんです。
その感情は、大切にしていいものです。
迷うことは、悪いことではありません。
迷うことは、ちゃんとその家に向き合っている証です。
「決められる」という自由と、その背中を押す制度のこと
相続登記を終えた家は、ようやく自治体や国の制度と“つながる”ことができます。
登記が終わっていなければ、「家の持ち主は誰ですか?」というところで話が止まってしまい、
補助金や改修の相談すら前に進みません。
だからこそ、登記が終わった今、ひとつ大きなハードルを越えているんです。
- 解体の負担を減らせる制度。
- 古民家を生かす改修を応援する制度。
- 耐震の不安を現代の基準へと近づける支援。
補助金というのは、「家を放っておかず、ちゃんと向き合いたい」と思う人を支えるために存在します。
やりたい気持ちを、「いつか」ではなく 「できる」 に変える仕組み。
制度は、味方です。使えるものは、使っていいんです。
“壊す”という選択の中にも、やさしさはある
祖父の家をどうするか悩んでいたご家族の話です。
家は長く空いていて、夏には草が胸の高さまで伸び、冬の風が壁の隙間から吹き込むような状態でした。
それでも、縁側に座ると、子どもの頃に祖父と食べたスイカの味を思い出すそうです。
「壊すなんて、薄情なのかな」と、ご家族は口にしました。
でも、壊したあと、そこは家族がまた集まれる、広くて明るい場所 になりました。
畑になり、季節ごとに色が変わる庭先になり、みんなの車が停められるスペースにもなりました。
「形はないけど、ここにまた人が集まれるんです。それが嬉しいんです。」
その言葉は、ひっそりと、でも強く心に残ります。
壊す選択は、思い出を手放すことじゃない。思い出を“現在の暮らしの形”に合わせること。
そう思っています。
“残す”という選択は、時間を未来へつなぐこと
古民家の梁に触れたとき、ほこりの中から木の香りがふっと立つ瞬間があります。
それは、その家がまだ「呼吸している」証です。
再生を選んだご家族は言いました。
「新しい家にすることも考えたけれど、ここを離れたら、帰ってくる場所までなくなる気がして。」
再生には費用も手間も時間もかかります。
でも、そこにあるのは “繋ぎ直す” という行為です。
新しい断熱材の奥に、誰かが削った梁の手の跡が残っていたり、土間に少しだけ昔の名残を残したり。
「ただ残す」ではなく「今に合わせて活かす」。
家は、ただそこにあるだけで、誰かの心の支えになります。
“託す”ことで家は生き続ける
家を人に渡すことは、さよならではありません。
人が暮らすことで、家は生き返ります。
灯りがともり、引き戸が開閉し、鍋が夜の湯気を立てる。
それだけで、家は再び家になります。
空き家バンクや地域のネットワークを通じて、新しい暮らし手がやってきた家があります。
そこでは、庭に子どもの遊ぶ声が響き、近所のおばあちゃんが野菜を持ってきてくれる。
元の持ち主さんは、遠くにいても、「自分の家は、まだ誰かの生活を支えているんだ」と感じています。
家は、そういうふうに受け継がれていくこともあるのです。
決めることは、家族の未来を“語ること”でもある
家の話は、暮らしの話です。
- 誰と過ごすか。
- どこで過ごすか。
- どんな日々を積み重ねたいか。
それは、目に見える資産の話ではなく、人生の時間をどう育てるか という話。
だからこそ、焦らなくていい。でも、止まらなくていい。
家は、あなたと家族が次に歩きだすための場所です。
クレアは、その話し合いの途中に座ります。
口を出すのではなく、選択肢をていねいに並べる役目です。
あなたの家には、まだ未来があります。
形が変わっても、誰かに渡っても、そこにあった時間は、消えません。
大切なのは、「家をどうしたいかを、ちゃんと決めること」。
その決断が、家を救い、家族を前へ進めます。
どう使えばいいか、迷っていたら、その迷いごと、持ってきてください。
私たちは、その隣に立ちます。
家は、人の時間を支える器です。
その器が、これからも、誰かの暮らしをそっと守れますように。
*********** 追 記 *******************************
補助金の観点から言えば、現在、丹波篠山市では「相続登記・遺言書作成」のための“専用の補助金”が市の公式案内に大々的に掲載されているわけではありません。
とはいえ、司法書士や弁護士、専門家との無料相談会など、名義整理・登記に関して “相談できる環境” は整っています(たとえば、司法書士による無料登記・法律相談会が定期的に案内されています)。
一方で、他の自治体では「相続登記費用および遺言書作成費用を一部補助する制度」が導入されており、たとえば兵庫県内の尼崎市では、「登録免許税を除く司法書士報酬等を補助(対象経費の3分の2/上限10万円など)」という形です。
このことから言えるのは、「補助金がすぐ使える・安心できる」という状態ではないものの、
“使える可能性”を視野に入れておくべき制度であるということです。
名義整理・登記・遺言作成という“家を動かせる状態にする第一歩”を確実に進めておけば、
今後、市や県が制度を拡充したときにも恩恵を受けられる体制になっていることになります。
ですので、登記を終えた今、まずは専門家や市の窓口に相談し、「この家の手続き・費用・制度利用可能性」について一緒に整理しましょう。
その後に「改修」「解体」「貸す・売る」の選択肢に向かえば、安心度はぐっと上がります。
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