評点1.0の壁と、失敗しない備えの始め方
こんにちは、丹波篠山市の工務店「クレア」の高見です。
2024年の能登半島地震のニュースは、私たちの記憶にもまだ新しいかと思います。
日本全国、いつどこで大きな地震が起きてもおかしくない、そんな時代に、改めて「住まいの安全」について考える方が増えてきました。
その中でも、「今住んでいる家の耐震性が気になる」「建て替えまではできないけれど、できることから始めたい」といったお声をよくいただきます。
そこで今回は、「耐震リフォーム」について、なるべくわかりやすく、でも現場目線もしっかり交えてお伝えしてみようと思います。
耐震リフォームって、どんなことをするの?
簡単にいえば、いまの家の弱点を見つけて補い、地震に耐えられるようにすることです。
2000年に建築基準法が大きく改正されたのをご存知でしょうか?
それ以前に建てられた多くの家は“旧耐震基準”といわれ、現在の基準に比べて地震への耐性が低いとされます。
クレアでも、こんなご相談をいただくことがあります。
▶ 施主の声:丹波篠山市 Yさん(築45年の木造住宅)
「ひとり暮らしになってからは、地震のたびに揺れが怖くて…。娘にから“お母さん、ちゃんと調べてもらって!”と背中を押されて、まずは診断だけお願いしました。」
このようなケースでは、まず「耐震診断」を行い、建物のどこに弱点があるかをチェックします。
そこから必要に応じて、
- 壁の補強
- 屋根の軽量化
- 床の剛性化
- 柱や梁の接合部の補強
- 基礎の改修
など、家に合った方法を組み合わせて進めていきます。
評点1.0というハードル。数字だけじゃ見えない現実
耐震診断では、「構造評点(ひょうてん)」という数値で評価されます。
- 評点1.0以上:倒壊しない可能性が高い
- 0.7〜1.0未満:倒壊の可能性あり
- 0.7未満:倒壊の可能性が高い
多くの方が「じゃあ1.0を目指せばいいんですね」とおっしゃるのですが。。。
実はこの“1.0の壁”がなかなか厚いのです。
理由は、昔の家ほど構造のバランスが悪く、補強ポイントが多くなりがちだから。
壁を増やす、床を補強する、屋根を軽くする…とあれこれ加えていくと、「あれ? これ、建て替えたほうが早いのでは…?」という話になりかねません。
でも、ここで大切なのが、
「1.0に届かなくても、命を守る補強はできる」
という考え方です。
“家全体”じゃなくていい?『シェルター』としてのリフォーム
そこで注目されているのが、家の一部だけを重点的に補強する方法です。
「家族が集まるリビング」「寝室」「玄関そばの部屋」など、いざというときに避難できるエリアを強くするイメージです。
これを“シェルター的耐震化”と呼ぶこともあります。
家全体に比べて費用が抑えられるのはもちろん、工事期間も短く、生活への負担が少ないのがメリットです。
クレアでも、こうした「部分耐震リフォーム+地震時の避難動線の設計」という形でご提案することが増えています。
よくある工事内容と、それぞれの注意点
✅ 屋根の軽量化
土葺き瓦→ガルバリウム鋼板などの軽量屋根へ
建物の重心が下がり、揺れにくくなります
注意点: 雨音が響きやすくなる/外観が大きく変わることも
✅ 床の剛性化
“ふにゃふにゃ床”に構造用合板などを追加し、揺れに強い床に
注意点: 床が若干上がる→段差注意/床材を全面張り替える必要あり
✅ 耐力壁の追加
木造住宅のバランスを整えるための柱・壁の配置補強
注意点: 間取りの自由度が下がる/配置バランスを間違えると逆効果
失敗しやすい耐震リフォームの“あるある”
以下のようなケース、実は少なくありません。
- 「屋根だけ軽くしたらOK」と思っていた → 構造バランスが崩れて逆に不安定に
- 「診断なし」で壁を増やした → 揺れに強くなるどころかねじれやすい構造に
- 「費用重視」で最低限しかやらなかった → 効果が限定的で、結局不安が残る
耐震は、“全体のバランス”が命です。
目に見えるパーツだけでなく、「家としての構造のつながり」を理解している業者と相談することが、成功の第一歩になります。
クレアの考える“現実的で、やさしい耐震リフォーム”
私たちクレアでは、「建て替えずに、今の家を活かす」ことも大切にしています。
思い出のある家、まだまだ使える家。
それを壊すのではなく、今の状態を活かしながら、できる限りの備えをしていく。
それが、これからの耐震リフォームの理想だと思うのです。
地域密着でやっているからこそ、丹波篠山の家の“クセ”もよく知っています。
「お金をかけるより、工夫を優先したい」、そんな声にも、できる限り応えたいと思っています。
まずは“知ること”から、始めませんか?
耐震リフォームは、派手さはありません。
でも、「家族の命を守る」という、何よりも大切な役割を持っています。
「うちはどうなんだろう?」
「診断だけでもしてみようかな?」
そんな小さなきっかけが、備えの第一歩になります。
クレアでは、耐震診断からご相談いただけます。
もちろん、今すぐ工事をしない方でも大丈夫です。
“今の家でできること”を、一緒に考える。
そのお手伝いができれば、私たちも本当にうれしく思います。
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